サントリーのライトノベルコンテストに応募した作品

こんばんは、まらりんです。

サントリー食品インターナショナル(株)が、2019年12月27日 正午~2020年2月3日 13時 の期間で、ライトノベルコンテストを開催していたのをご存じでしょうか。

上記サイトによると、概要は以下のようです。「クラフトボス」シリーズのプロモーション企画とのことです。

「クラフトボス」シリーズは、現代の働く人を快適にする新しい相棒として、“WORK&PEACE”をコンセプトに、多様な働き方、価値観にフィットする新しい選択肢を軽やかに提案しています。そして本コンテストでは、「お仕事」をテーマに、ライトノベルとイラストそれぞれの作品を広く募集します。

https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF0926.html

特別選考委員は、「カゲロウプロジェクト」のプロデューサーである、ボカロPの「じん」さん!

コンテストの情報発信を担うナビゲーターは、サントリー公式バーチャルYouTuber「燦鳥ノム」ちゃん!!

特設サイトのURLは既に機能していないのですが、 燦鳥ノムちゃんの YouTube チャンネルで結果発表が見られます。(自分は何の入選もなかったですw)

【天才発掘!?】クラフトボスライトノベルコンテスト結果発表【じんさん審査】

燦鳥ノムちゃんが好きなので、ライトノベル部門に応募しました。(イラスト部門もあった)
締め切りの数分前に、ギリギリ提出できました……

内容としては、少年ジャンプ+の「左ききのエレン」と、まんがタイムKRコミックスの「NEW GAME!」を意識しました。(超絶劣化コピーです……)

結果発表後は、なろうとかカクヨムとかに投稿しようかな~と思っていました。

しかし、結局しなかったので、ここに公開します。
(各章のタイトルは、提出時にはなかったので、今考えました。)

よろしければ、読んでやってください。

あらすじ

俺は美大に在学中、広告系のベンチャー企業の社長にスカウトされた。天才になれなかった俺が認められたようで、有頂天になった。しかし、入社してから、自分が特別優秀というわけではないことを思い知った。特に、同期である「山倉」との実力差を痛感し、劣等感に苦しむ日々を送る。

そんなある日、山倉から転職の話を聞かされる。「昨日の自分を超えるため」と、山倉は言った。俺はその意味を知り、救われる。そして、俺も昨日の自分を超えるべく、日々の仕事に打ち込むのであった。

希望に満ちた過去

――ヒーローに、ならないか?

社長にそう言われて、俺は今の広告系のベンチャー企業に、グラフィックデザイナーとして新卒で入社した。もう、去年の話だ。

 社長は創業者でもあり、バイタリティーに満ち溢れている。メディアにも度々出演し、かなり名の知れた人だ。要は、カリスマだ。そして、採用については、中途も新卒も、アルバイトも正社員も、すべて社長が自らスカウトすることで有名だ。新卒でスカウトされれば、大学でも一目置かれる。まさに、ヒーローだ。

 俺は去年の1月、社長にスカウトされた。卒業制作展の会場での話だ。というのも、有名大というわけではないが、俺は一応美大卒だ。美大では、4年生の1月あたりに、学生が4年間の集大成を披露する。それが、卒業制作展、略して卒展だ。普通の大学で言うところの、卒業論文みたいなものだろうか。ただし、美大の卒展は、学外の人も見に行くことができる。卒展に来ていた社長が、会場で俺の作品を見て、その場で俺をスカウトしたのだ。

 俺は、有頂天だった。カリスマと呼ばれる社長が、学生の俺を直々にスカウトしたのだ。いわゆる「天才」への仲間入りができたと思った。そして、死に物狂いで何とか勝ち取った無名の広告代理店の内定を蹴り、俺はヒーローになることを決めた。

 しかし、ヒーローは俺だけではなかった。というより、俺より凄いヒーローが、社内にごろごろいた。ヒーローというより、怪物と言った方が適切だろうか。特に、「山倉」という奴がヤバい。大学2年の時にスカウトされ、アルバイトとしてずっと働いていたそうだ。大学だって、だれもが知っている有名美大だ。山倉も去年大学を卒業し、そのままここの正社員になった。こういう場合も、俺と同期と言えるのだろうか。山倉に対して抱いている感情を名付けるなら、「劣等感」になるのだろう。ともかく、俺はこの会社では、もはや天才でもヒーローでも、何でもなかった。

苦悩する現在

「やっべ……」

コーヒーをこぼしてしまった。キャップを外した飲みかけのペットボトルに、腕があたってしまったのだ。少し居眠りをしていたかもしれない。ここ数日は、会社に泊まり込んで働き詰めだったため、疲労がたまっていたのだろう。時代の流れもあり、この会社も無駄な残業を推奨しているわけではない。しかし、今は納期が迫っている。「必要な分だけ、必要な残業をする」というのが、会社の方針だ。今日会社に泊まる予定の人は、この部屋を見渡す限り、俺を含めてあと5、6人にいた。俺としても、クオリティの高い仕事をすることで、みんなに認められたい。だから、嫌々残業しているわけではない。

ペットボトルから漏れ出すコーヒーが、デスクを侵食する。ボックスティッシュからティッシュを数枚取り出し、急いでコーヒーを拭き取った。仕上げに、ウェットティッシュケースからウェットティッシュを1枚取り出し、入念にデスクを拭いた。液晶タブレットを使って仕事をしていたが、幸いコーヒーはかからなかったようだ。高価なデバイスだから、壊すわけにはいかない。コーヒーの残りがそれほど多くなかったのが幸いして、大事には至らなかった。ドラマや漫画では見たことはあるが、まさか自分が居眠りをしてコーヒーをこぼす事故を起こしてしまうとは。

こぼしたコーヒーは、クラフトボスのブラック。サントリーの製品で、俺のお気に入りだ。味はもちろんだが、容器の形状も良い。このブランドは、大学1年の時から愛飲している。課題や提出物が多かったため、1年の時から度々徹夜していた。俺の徹夜のお供として、もう4年以上も共に戦場をくぐり抜けてきた。もはや、戦友と言っても過言ではない。それだけに、もったいないことをしてしまった。自宅であれば、テーブルに口をつけて、吸ったり舐めたりしたのに。

時刻は、午後11時59分。窓の外を覗くと、1月の凍てつく空気が、オフィス街を突き刺すように包み込んでいる。明かりが灯ったビルが、ちらほら見える。ここと同じ、不夜城だろうか。何の会社かも分からないし、どんな人が働いているかも分からないが、俺は勝手に親近感を覚えた。今の事故で目が覚めてしまったし、俺ももう少し頑張ろうと、再び液晶タブレットに向き合った。すると、後ろから声がかかった。

「大丈夫?コーヒーこぼしたみたいだけど。」

振り返ると、山倉が立っていた。山倉も、ここ数日は会社に泊まり込んでいる。

「あぁ、大丈夫。そんなにはこぼしてないから。」

「ならよかった。新しいの、いる?今会社に泊まり込みだから、コーヒーけっこう買い込んでいて、ストックあるからさ。まだ寝ないならどうぞ。」

山倉はそう言って、持ってきていた缶コーヒーのブラックを俺に見せた。山倉は同期では実力がトップで、社内で最も期待されている新人だが、威張るような態度は決してしない。今みたいに、周りにも気を使い、仲間を大事にする。つまりは、良いやつだ。劣等感は感じても、妬みは感じない。

「いや、徹夜する時は、このクラフトボスのブラックって決めてるんだ。わざわざありがとうな。」

山倉の持ってきたコーヒーは別ブランドだったため、俺はそう言って断った。

「そうなんだ。じゃあ、頑張ってね。」

山倉は自分のデスクに戻り、仕事を再開した。俺も軽く息を吐いて、再び液晶タブレットと取っ組み合った。

差し込む光

「実は僕、2月から転職するんだ。」

山倉が俺のデスクまで来て、いきなりそう言った。俺がコーヒーをこぼしたのが、昨日の今日。寝耳に水とは、このことか。時刻は、午後11時59分。この部屋には今、ちょうど俺と山倉の2人しかいない。他の人は、トイレに行っているのか、コンビニに行っているのかは分からない。山倉は、俺と2人きりになれるタイミングを計っていたかのようだった。

「急な話でごめん。他の人にも、個別に言って回ってるんだけどね。」

飛ぶ鳥を落とす勢いのベンチャー企業でも、辞める人は辞めていく。俺が入社してからも、人員の入れ替わりはそこそこ見てきた。でも、同期で辞めた人は、まだいなかった。

「そうか、確かに急な話だな……でも、何で?」

何か会社に不満でもあるのだろうか。そりゃあベンチャー企業だし、福利厚生が良いとは言えない。有給休暇を取った人も、周りではいなかったように思う。それとも、給料だろうか。実力主義の会社だから、この前の給与査定では、山倉の基本給はけっこう上がったはずだ。インセンティブも多かったはず。となると、他にもっとやりがいを感じられるような会社を見つけたのだろうか。刹那の間に、いろいろな考えが廻った。

「――昨日の自分を、超えるためさ。」

そして、山倉はそう答えた。

「昨日の自分を、超えるため?」

俺は聞き返した。一体、どういう意味だろうか。

「まぁ、元々は僕の言葉じゃないんだけどね。ほら、僕、大学2年の時に、ここでバイト始めたって言ったよね。同じ時期に、もう1人バイトで入った人がいてね。僕と同じ2年生で入った人。」

「えっ、その人って、今会社にいる?」

「いや、1年ちょっとで辞めたから、もうとっくにいないよ。『八神さん』っていう女性なんだけど、僕より全然優秀な人だったよ。」

「山倉より優秀!?」

驚いた。山倉は、「同い年で、こいつ以上にできる奴なんているのか?」というくらい、本当に凄い奴だ。それを凌駕する奴が、かつてこの会社にいたとは。

「僕なんかじゃ、全然かなわなかったよ。正直、劣等感も感じていた。」

「劣等感……」

山倉でも、俺のように劣等感を感じることがあるのか。

「それで、八神さんが辞める直前に、思い切って聞いてみたんだ。『どんなことを意識して、仕事に取り組んでいるの?』って。」

「その答えが、さっきの……」

「そう。『昨日の自分を超えること』って。それで、八神さんがその意味を教えてくれたんだ。」

「その意味?」

俺が今、山倉に最も聞きたいことだ。

「うん。その八神さんも、大学とかで劣等感を感じることがあるみたいでさ。」

「山倉より優秀な八神さん」よりさらに優秀な、誰か。改めて、恐ろしい世界だと実感する。

「自分より優秀な人を目標にしたり、超えてやろうと意識したりして頑張るのは、とても良いことだと思う。でも、相手だって頑張っているわけだから、その人との差を縮めるのは、なかなか難しい。それで、劣等感を感じ続けて、ずっと悩んだり苦しんだりするようになってしまう。そこで、目標を『昨日の自分を超えること』に変えるんだ。」

「目標を変える……」

「今日頑張れば、少なくとも『昨日の自分』は越えられる。それを積み重ねて、自分を毎日アップデートし続けるんだ。」

――昨日の自分を超える。

その言葉が、胸にすとんと落とし込まれ、そして全身に染み渡った。

「これは、誰にでも立てられる目標だね。これを聞いた時、僕は救われた気がしたよ。」

俺もたった今、救われた気がした。

「……おっと、ちょっと話が長くなってしまったね。まぁ要は、キャリアアップのために転職する、ってだけなんだけどね。ここに不満があるわけじゃないよ。」

「なるほど……」

「じゃあ、そういうことだから。あっ、そうだ。これも渡そうと思っていたんだ。」

山倉はそう言って、ペットボトルのコーヒーを渡してきた。クラフトボスのブラックだ。

「徹夜する時は、確かこれなんだよね。ここでの泊まり込みも、僕は今日で最後だろうし。逆餞別になるのかな。もう寝落ちしてこぼしたりはしないようにね。」

山倉は笑いながら言った。そして、自分のデスクに戻り、再び自分の仕事に取り組んだ。

「昨日の自分を超える、か……」

クラフトボスのブラックを見つめて、俺はつぶやいた。

拓かれる未来

2月になった。山倉は、もういない。それでも、俺より優秀な奴は、この会社にいくらでもいる。社外にも目を向ければ、「いくらでも」どころじゃないだろう。

 今日は、クライアントから急な依頼が入った。かなり厳しいスケジュールになるが、俺は買って出た。今日も、会社に泊まり込みだ。時刻は、午後11時59分。窓の外を覗くと、2月の凍てつく空気が、オフィス街を突き刺すように包み込んでいる。明かりが灯ったビルが、ちらほら見える。

――ヒーローに、ならないか?

ある日の社長の言葉を、ふと思い出した。俺は、まだまだヒーローにはなれない。

――昨日の自分を超える。

そして、山倉の言葉を思い出した。時刻は、午前0時になっていた。クラフトボスのブラックを一口飲んだ。俺は今日も、昨日の自分を超えてゆく。

あとがき

以上です。

これを執筆したのはちょうど入社前で、やる気に満ち溢れていた時期でした。
今の自分とは大違いです……

今の自分は、「 昨日の自分を超える 」どころか、日を重ねるごとに劣化しています。
入社直後のビジネスマナー研修の時が、社会人生活の全盛期でした😊

さて最後に、 サントリー公式バーチャルYouTuber「燦鳥ノム」ちゃんの、Twitter と YouTube チャンネルのリンクを置いておきます!

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ちなみに、燦鳥ノムちゃんの ファンアート (ミニゲーム) を以前作りました。
こちらも、よろしければ遊んでやってください。

燦鳥ノムちゃんの3周年記念ゲーム

それでは、また!

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